プロ野球のコリジョンルール問題から学ぶ(ルールと行為の正しい理解について)
今シーズンからプロ野球に導入されたコリジョンルールが問題になっている。
まずはコリジョンルールの導入のきっかけについて理解し、その後正しい考え方について述べていく。
選手生命を危ぶまれる怪我がきっかけ
2011年にサンフランシスコ・ジャイアンツのバスター・ポージーが本塁のクロスプレーで激しいタックルを受け、選手生命も危ぶまれる大ケガを負ったことがキッカケとなり、2014年からコリジョンルールが採用された。
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上記の理由によるアメリカでコリジョンルールが採用された。そして、プロ野球の選手会も"クロスプレイによる怪我の防止"を理由に上記ルールの導入をNPBに要望したのである。
コリジョンルールにより問題になった試合
コリジョンルールが導入されたことにより、判定の覆るシーンが多く見られる今シーズンのプロ野球。特に感情的に大きなきっかけとなったのが先日のこの試合。
一度はアウトの判定になったもののその後のリプレイ判定により結果が覆った。覆った結果により、勝敗が決まったのだから負けた西武サイドが感情的になるのもうなずける。
ただし、コリジョンルールを簡単に理解すると以下のようになる。
1.本塁突入走者は野手に故意に接触してはいけない
2.野手が走路をブロックしてはいけない
3.野手が捕球しようとして走者の走路をふさぐ結果になった場合には1,2は適用されない
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従来のルールではこれはアウトであったにもかかわらず、コリジョンルールにより判定が覆ってしまい激怒するのはわかるが、今回は2に該当するためしかたないと捉えるべきである。
コリジョンルールに激怒する人たち
度重なる判定の覆しに激怒する人たちがいる。
大久保氏は以下のように述べている。
今やルールを過剰に意識するあまり、腰が引けての追いタッチばかり。ファンサービス、捕手の技術向上にとって、新ルールはいいところがない。
このように述べているが氏は間違っている。
腰が引けての追いタッチとあるが、新ルールを適用しているアメリカでは追いタッチは捕手の基本プレイとなっている。ルールを順守するためにはブロックを避けて、追いタッチをする必要がある。
捕手の技術向上にとって新ルールはいいところがないと述べているが、"クレスプレイの怪我を防止"するという目的があって決まったルールである。このルールにおいての捕手の技術向上は追いタッチの技術を磨くことである。
ルールと行為の正しい理解について
危険を回避するためというのが今回のルールを設けた目的であり、今のは危険ではない"行為"なのでセーフであるというのは間違いである。危険だからルールが設けられたのであって、危険でない"行為"だからセーフになるというルールではない。
危険かどうかというものを判断しやすい"ルール"に置き換えた結果、危険でないものを含んでいるのがコリジョンルールとなっているというのが正しい理解である。
その前提を踏まえたうえで、少なくとも野球評論家と呼ばれる人には正しい野球の見方をしてもらいたい。
ちなみにファンとしては怪我の防止という前提を覆して、危険だからスリリングでおもしろいとする評論家にもぜひ出てきてもらいたい。しかし、世の中の傾向として一度このルールを通してしまった以上、より怪我が増加する方向にルール改正するのは難しいだろう。
*1:ベースボールキング:慣れるまで1年は必要?「コリジョンルール」の導入で起こる問題 http://baseballking.jp/ns/column/60738
*2:NPB 2016年度 野球規則改正:http://npb.jp/npb/2016rules.html